![]() ![]() ![]() 山村さんの電話で起きる。声がガラガラ。もうモスクワについているらしい。街まで骨董品を探しにいくらしいが(今日は夕方からの閉会式以外フリー)、かなりしんどかったので船に残ることにする。ASIFAマガジンの締め切りも明日までだし原稿を仕上げてしまわないと……しかしもう船がストップしているからか、部屋のコンセントに電気が通じてない……困ったなあ…… ![]() ・廊下の交流 船がほんとにもう止まってる。ショックだ。仕方なく廊下のコンセントを使って作業。当然みんなの邪魔になる。もしくはからかわれる。トゥメリヤさんに「島唄は今回のヒットソングになったね」と言われて嬉しい気持ちになる。今回のフェスのなかで一番意味不明な参加者だったと思うので、盛り上がりに少しでも貢献できてよかった。 通電ストップは俺のせいだった。暖房のスイッチだと思っていろいろといじっていたものが通電のスイッチだったらしい……戻したら直った。無駄な廊下作業。まあ、みんなに構ってもらえたからいいや。 さみしい。フェスティバルが終わってしまうのがさみしい。昼食はいつもと違う座席構成。チェルカスキーさんも同じテーブル。とても優しい方。こんなふうに年を取りたい。島唄を一緒に歌ったのをきっかけに、フェスティバルを通じて、常に優しさを振る舞っていただいた。作品もみなきゃ。ウォッカをいただく。非常に強いやつだったので少しずつしか飲めなかった。「サケ(日本酒のこと)スタイルの飲み方だね」とチェルカスキーさん。頭がふらふら…… バスで閉会式の会場へ向かう。 ![]() ![]() ・閉会式 夕方から閉会式。緊急で編集された今回のフェスのドキュメンタリー・ビデオが流れる。嫌な予感がする。「あなたにとってクロックとは」という例のインタビューが流れはじめる。嫌な予感が増す。前後の話も何もなく、俺の島唄を歌う姿が唐突に流れる。照れで少々魂が抜けたような感じで少し後傾した姿勢で、震えた声で歌うしょぼいジャパニーズの姿が映し出されている。本気で恥ずかしくなった。消えてしまいたい。歓声が起こったのがせめてもの救いか……苦笑も起こったけど。 ![]() ![]() 授賞式。受賞作品は5秒くらい映像が流れるのだが、カテゴリー3で審査員特別賞を受賞した"The Employment"(Santiago "bou" Grasso)がものすごく面白そうだった。寝坊して見逃したやつだ。とても悔しく情けない気持ちになる。 ![]() ・コヴァリョフの新作について話す 船に戻ってさよならパーティー。イゴール・コヴァリョフと今新作長編を共同で監督しようとしているというチャールズ・スウェンソン(帽子にサングラスのあのすてきな初老の男性です)とひたすら話す。いろいろと面白い話がきけた。もしきちんとした体制で作れるなら、どう考えても面白いフィルムになると言っていた。3Dと2Dをくみあわせたかたちになるというが、それは少し不安。(本人も不安視していたが。) 脚本を書いているのはチャールズで、人好きのしない三人の子どもと彼らが憎んでいるおばあさんの話になるらしい。両親は仕事で家を出て、彼らは毎日おばあさんの家に預けられる。彼らのあいだにはいざこざが起こったり、子どもたちが空想に逃げたりしつつ、最終的には彼らのあいだには和解が訪れる。その話をコヴァリョフの絵柄とリズムで想像してみたらちょっと鳥肌が立った。 コヴァリョフとチャールズは『ラグラッツ・ムービー』ですでに組んでいて(今回のように共同監督ではないが)、コヴァリョフが細部に執拗にこだわる一方でチャールズは全体を見渡す力に長けているということで、お互いに補いあえる良いコンビらしい。チャールズがスクリプトを綿密に組み立ててから作品に取りかかる一方で、コヴァリョフはいくつかのイメージ・スケッチから組み立てていく。コヴァリョフのやり方は長編では作品として成立させるのがなかなか難しいとのことで、今回の脚本はチャールズが最初に一人で書くらしい。 ロスのどこかと中国のスタジオ、そしてスタジオ・ピロットの共同制作で、話がうまくすすめば1年半くらいで完成するらしい。いくつかのスタジオから好意的な反応をもらっており、うまくいきそうだとのこと。短編作家が自然に長編へとなだれ込んでいける流れができつつある。アニメーションは新しい可能性をみせつつあるのではないか。 一方でまた、コヴァリョフは短編のアイディアもすでに考えていて、カナダのどこかのスタジオ(NFBかもしれないとのこと)と話が進んでいるらしい。 チャールズはとても良い人だった。包容力があった。最後に彼と話せてよかった。なんだか癒された。 ・すでに祭りのあと 今日はもう祭りの後だった。モスクワ在住の人はもう帰っていたり、明日朝早い人はすぐ寝てしまっていたり。全体的に沈滞気味。とりあえずノルシュテインにお茶のお土産を渡す。嬉しそうにしてくれたのでよかった。山村さんがノルシュテイン本にサインをもらう。その過程で、ノルさんが「結構大事なことを話したと思うので昨日のインタビューの録音が欲しい」と言うのでダッシュで部屋に戻ってレコーダーをとってきて、トゥメリヤさんにとりあえず渡す。山村さんは明日の早朝のバスで空港にいくのでお別れをする。さあ、日本語を使えなくなるぞ。(俺はこの後一週間、モスクワに残る。) ![]() ノル本にサインをもらう山村さん。俺の本はモスクワの友達がキープしているので手元にない、サインもらえない…… 昨日までのたまり場に顔を出してみても、人がまばら。はあ、終わったんだなあ。何人かの人とはまたどこかのフェスティバルで会えるといいな。 ・まだ終わってなかった いちおうバーなどに顔を出してみたらなんだか盛り上がりはじめていた。 ![]() ![]() 何人かと話す。島唄をもう一度歌わされる。「歌ったり踊ったり、あなたはすごく勇敢ね!」とかわいい子に言われて「えへへ」と照れる。みんなと連絡先など交換しあいながら、だがまだ何人かにさよならを言っていない。明日は11時には船を出なきゃいけない。それまでになんとかさよならの挨拶をしなきゃな、明日の朝食のときに言えばいいか、とか考えながら、記憶が途切れる。 ・10日目:あっけない幕切れ 朝起きたらもう11時だった。船には誰もいなかった。 10>(モスクワ・アニメーション・スポット訪問記へ) |
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