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良いアニメーションはDVD買ったりレアな上映会行かないとみれないと思ってませんか。毎週みれるんですよ。地上波で。NHK教育のプチプチアニメで毎週木曜にやっている湯崎夫沙子の「ナッチョとポム」は要チェックです。 湯崎さんはイタリア在住の日本人作家です。去年帰国なさった際に開催された講演会に行ったのですが、こんなエネルギッシュな人みたことない、というほどの奔放ぶりを発揮していました。 粘土のメタモルフォーゼを特徴とする作風ですが、なぜそのようなことをするかと言えば、「私たち自身が変化しつづけているから」とのこと。「だってこの瞬間にも髪の毛が何万本も落ちているわけでしょ。みんな変形しているんですから。そのことを表現したい。だからあらゆる止まった形のものに生命を与えるものとしてアニメーションをつくっています。」(ここのインタビューから。)そうです、あまりに基本的すぎて忘れてしまっていること、みんな常に変化しつづけていることを作品にしているのです。生命の力です。でも何万本も一瞬で髪の毛落ちませんけどね。湯崎さんなら常に何万本も生え変わっている可能性ありますけど。 基本的には注文仕事で制作をしている人ですが、本人曰く、仕事の形態はどうでもいいそうです。どんな形式だろうと、それにあわせて自分のやりたいことはできるとおっしゃっていました。たくましい……物語も形式上かぶせているだけだとか。生命の力をとにかく過剰に放出することがたぶん重要なのでしょうね。言葉ではなく形や色や動きで伝えることを主眼におきながら。なんだかライアン・ラーキンみたいだ。 彫刻からアニメーションに入った湯崎さんは、動きをつくりだすとは「あるものにimpressionを与えること」だという面白い言い方もしていました。メタモルフォーゼのアニメーションは、対象が「何」であるかはあまり関係なく、「何」と「何」とのあいだを動いていく質の方が大事です。印象が大事です。WWFの仕事をしたという湯崎さんは、「あれ、なんだっけ、あの白くて黒くて動物の……」と言っていました。「パンダ」という名前が抜けてしまっていたみたいです。色の印象だけが。「何」は関係なくて、印象の方が重要なのですね。そもそも僕らもはじめから名称でおぼえるわけじゃないですしね。大人になると違うけど。 「ナッチョとポム」はDVDが二本出ています。「ぼくらと遊ぼう!」シリーズの奔放なメタモルフォーゼの愉快痛快ぶりと残酷さが好きな方は必ずや好きになることでしょう。主人公の二匹は宇宙から毎回降ってきますが、この世にはじめてやってきた赤ん坊という設定らしいです。だからポヤルの「ぼくらと遊ぼう!」よりもっと爆発的です。ワーとかギャーとかオゥーとか言っていてすごいです。(アニメーションどうぶつの僕も嬉しくなって吠えて応えたくなります。)乗り込んだ観覧車がどんどん加速して七色に溶けてしまって花火がバーンとなったり、ビリヤードの台に落っこちて跳ね回る玉に何度も何度も潰されたり(しかも苦悶の表情で)、水に溶けて土に浸透していったり。なんでもありとはこういうことを言うのでしょうね。 メタモルフォーゼもなんでもありで、目の前にあるものにどんどん変わっていきます。でもそういえば、僕たちだって子どものとき、いろんなヒーローになりきったりしていたわけですからね。身を守るとかそういう生存の目的もなくなにかになれるっていうのはたぶん人間だけですよ。(土居伸彰) 関連サイト NHKプチプチアニメ ホームページ 関連DVD ナッチョとポム おんがく[Amazon] ナッチョとポム みんなまんまる[Amazon] |
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ナッチョとポム
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