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アニメーションを伝える人1 < 1 2 >

Animationsでは短編アニメーションの魅力を伝える人々へのインタビュー企画をはじめます。劇場配給、パッケージ販売、テレビ放送、教育などアニメーションを届ける媒体に関わっている人々が、どのように考え、どのようにアニメーションを届けようとしているのかこの企画で浮き彫りにできればと思います。
第1回はパイオニアLDC時代から、いろいろなアニメーションのソフトをパッケージ化してきたジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンの井出美恵さんにお話を伺いました。(山村浩二)





ーザーディスクの頃

山村浩二
今回は、アニメーションを伝える人々へのインタビュー企画の第一回として、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンの井出美恵さんにお話を伺いたいと思います。

井出美恵
よろしくお願いします。

山村
僕のDVDをリリースしていただいていて、以前からずっとお世話になっています。

井出
こちらこそ。

山村
パイオニアLDC時代から、ジェネオン・エンタテインメント、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントと会社自体もいろいろと変化をされていますけど、僕自身が20代の頃にレーザーディスクの「アニメーション・アニメーション」シリーズがあって、DVDになってから「ニュー・アニメーション・アニメーション」シリーズと、ずっと継続的に続けていらっしゃいます。
パイオニアLDCのレーザーディスクの頃は、井出さんは関わってはいないですか?

井出
はい、レーザーディスク最初の頃のものには関わっていないです。ただ、レーザーディスクも何度か価格を変えるなどして出しなおしていますので、その途中の何回かは、直接関わってはいないですけど、横で見ていたりしました。フレデリック・バックさんが『大いなる河の流れ』を始めてレーザーディスクとして出したとき、来日なさったので、一ファンとしてご挨拶させていただいたり。制作担当として関わりだしたのは、DVDのシリーズとして再開した「ニュー・アニメーション・アニメーション」からになります。

山村
レーザーディスク時代に企画をされたのは……?

井出
「レーザーディスク」という社名だった頃に制作担当でいらした内田さんという方のオリジナル企画でした。企画意図ですが、LDソフトの普及を図るうえで、映画だけでなく様々な領域のジャンルに拡大することを考えていて、その一環として、世界の個性的なアニメーションとその作家たちを紹介していきたい、ということだったそうです。 

山村
レーザーディスク自体は何年くらいまで出ていましたか?

井出
2001年9月21日の映画のソフトが最後でしたね。

山村
アニメーション関連では、どれくらいリリースの枚数があったのですか?
「アニメーション・アニメーション」シリーズだと、ユーリ・ノルシュテイン、フレデリック・バック、ラルフ・バクシ……といろいろとありましたよね。

井出
フレデリック・バック、ラルフ・バクシのような作家別のタイトルとしては約10タイトル、ソビエト、中国などの国別・地域別タイトルも含めると約20でしょうか。リプライス版や作品別のバージョン違いのものもあったので、正確な数はわからないのですが。

山村
いろんな国のものと出されていますよね。

井出
はい、中国、ロシア、チェコ、ヨーロッパ、アメリカ、カナダです。

山村
「アニメーション・アニメーション」シリーズは、世界のアニメーションを紹介する意図があったのですね。

井出
で、もちろん日本でも、川本喜八郎さん、久里洋二さん、岡本忠成さんにお世話になり……

山村
手塚治虫さんは……?

井出
手塚さんは、『ジャンピング』をLDでリリースさせていただきました。DVDになってからは、「実験アニメーション作品集」としてやらせていただきましたね。



山村
「アニメーション・アニメーション」シリーズ以外に、「映像の先駆者」シリーズもありましたよね。ノーマン・マクラレンとか。

井出
そうです。「先駆者」では、マクラレン、レニ・リーフェンシュタール、オスカー・フィッシンガー、チャールズ&レイ・イームズ、アレクサンダー・アレクセイエフ&クレア・パーカーがありました。

山村
CGの先駆者、アメリカのジョン・ホイットニーもありましたよね?

井出
ああ、ありました。ジョン・ウイットニーとロバート・エイブルですね。





VD「ニュー・アニメーション・アニメーション」・シリーズ



山村
LD時代は、アニメーション、特に短編のものとしてはその二つのシリーズでやられていて、DVDになって、「ニュー・アニメーション・アニメーション」シリーズになりますね。再販のような形からスタートしたのでしょうか?

井出
はい、そうですね。ただ、権利が切れてからだいぶ久しいタイトルばかりでしたし、時代も新しくなって新しい作品も出て来ましたから、「アニメーション・アニメーション」シリーズでお世話になったタイトルにさらに追加して、新しい方々――山村さん含めてです――ともお話しさせていただいたというかたちになります。

山村
「ニュー・アニメーション・アニメーション」シリーズは井出さんと牧野正倫さんのお二人が最初から関わっておられていましたよね。本筋の流れはお二人で担当されていたのですか? 監修者として、外部から片山雅博さんが参加なさって、ずっと解説と作家の似顔絵も書かれていて……

井出
はい。

山村
前のシリーズを引き継ぐものもある一方で、新しいものもどんどん出ていますよね。特にトルンカなんかたくさん出ていますし……そのあたりの選択の基準は何だったのでしょうか?

井出
LD時代に紹介していた作品や作家を参考にしつつ、基本的には担当者が選んでいます。その後の進め方としては、こちらから権利元にコンタクトする場合や、どこかからお話しをいただいて縁ができる場合など、ケースバイケースです。レーザーディスクの時代と大きく変わったのは、海外アニメーションのコンテンツは日本では人気がある、ということが広まったので、海外の権利元とのやりとりがスムーズになったことですね。

山村
こういうのがありますよ、という話がいろいろ入ってくるわけですね。

井出
はい。パイオニアLDC時代に海外アニメーションのシリーズをLDで出していたという実績もあるので、初めての相手先とのやりとりも、パイオニアLDCの名前を出すと、スムーズに進めることができました。その環境の違いはすごく大きいのではないでしょうか。先輩たちのおかげですね。「映像の先駆者」や「アニメーション・アニメーション」シリーズは、実績が何もないところから自分たちで集めて探しにいき、相手の方に信用をいただかないといけなかったわけですから。マクラレンのときは、権利元であるカナダ映画制作庁(NFB)までフィルムを取りにいって、自分たちで日本に持って来て、フィルムからビデオ映像を起こしたらしいという話を聞いてます。また時代的にも、映画ビジネス自体で、権利を売買するということが非常にメジャーになって来ていました。それに、日本では知られていなかった海外アニメーション、短編アニメーションというジャンルがあって、たとえば『木を植えた男』のヒットなどで、ある程度ビジネスになる、っていうことが今は見えてきた。これは本当に大きな違いだと思います。

山村
じゃあまあ環境としては良くなったということですね。レーザーディスクのころに比べて。

井出
はい。実際に、弊社以外でも、海外や短編アニメーション作品を扱う方々が現れ、それぞれヒットなさってます。

山村
そうですね、たとえばコロムビアがチェコの短編系など沢山リリースされていますよね。

井出
チェブラーシカのように、いわゆるキャラクター商品というビジネスができる作品も出てきていますし。海外のアニメーションがそうしたムーブメントを起こす発信元になりえるコンテンツとして認知されることになったのが、以前と比べて大きく変った点だと思いました。放送においても、いままではこのようなジャンルの作品を放映するテレビ局といえばNHKだけでしたが、BS、CS放送が登場し、WOWOWや衛星放送などのNHK以外のテレビ局も興味を示して放送するようになったので、やっぱり海外アニメーションを取り巻く環境は「アニメーション・アニメーション」シリーズをLDで展開していた時代とは大きく変化したと思います。

山村
とはいえ最近はなかなかDVDが売れにくいと言う話もよく聞きますが。

井出
はい売れにくくなりました。全般的に。ハードディスクレコーダーが出来たときから減ったように感じます。

山村
なるほど。う〜ん。

井出
短編アニメーションだとテレビで流す機会がそれほどないので、そんなことはないだろうと思うのですが、全般的に、映像商品に対して、お金を出さなくなってきたのかなと。

山村
「出さなくても観られるもの」という意識になると買ってくれなくなると……

井出
とにかく、アート・アニメーションに限らず、全般的になかなか映像商品に手を出してもらえないっていう時代になってしまいました。これは個人的な意見なのですが、自分でもDVD-Rが焼けますよね。その時点で、映像のコンテンツに対する価値観が変化してしまったのではないかと。テレビで放送したものを手軽にDVDRに焼けるようになってしまったことで、何年もかけて愛情をこめて作った作品を受け取めることに対する気持がフラットになってしまったのかな……と。他にも不況でお金をだしにくい状況、パッケージ自体に魅力があるかどうかという問題も、もちろんあるとは思いますが。 2 >


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