山村浩二-雑記3(2003.3)

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2003.3アカデミー賞
3月18日
ロサンゼルス到着。
出発直前にイラク戦争が始まりそうで、アカデミー賞開催中止の噂がTVで流れたりして、渡米を躊躇したが、いざ着いてみると、ロサンゼルスは静かで平穏。空港のセキュリティーもそれほど厳重ではなかった。
妻と二人、空港からタクシーでホテル、ラディソン・ビバリー・パビリオンに向う。
タクシーにジャケットを置き忘れる。貴重品は入っていなかったが、結局最後まで見つからず。
ロン・ダイヤモンドさんと連絡を取り、ロンさんと夕飯をご一緒する事になる。
アカデミー会員のロンさんは今回のノミネートの時からお世話になった人で、アクメ・フィルムワークスアニメーション・ワールド・ネットワークの社長でもある。
夕飯の前に、ロンさんのお宅を訪問。ビバリー・ヒルズにある古いスペイン風の一戸建て。昨年引っ越されたばかりで、まだ内装は途中だが、素敵なお宅だ。
奥さんと二人の娘さんと共にイタリアン・レストランで夕食。

19日
朝食は、ロンさんお勧めのとてもアメリカンなレストランに行ってみる。
味、ボリュームとも満足。

午前中、ロンさんの次女アナちゃんの小学校のクラスで、短編ノミネート作品を上映して子ども達が投票するという授業に特別ゲストとして参加。

教室で子ども達と一緒に今回のノミネート作品のビデオ上映を鑑賞。
ロンさんは毎年ボランティアで小学校でのこのイベントをしているそうだ。
子どもたちは、私達が帰った後、作品を選んだ理由の作文を書いていた。
ロンさんの車でドリーム・ワークスに向かう途中、パスポートが必要な事に気付きホテルに戻る。ビック・スタジオはセキュリティーが厳しいのだ。

ドリーム・ワークスで今回ノミネートされた監督達と合流。
ノミネート作品の上映と質疑応答が終わった後、スタジオのトップの方々と昼食。ここは無料の社員食堂がある。
『情熱大陸』の密着スタッフも合流。その後スタジオツアー。2006年公開予定の長篇、短編のストーリーボード、スタッフルームを見学。

20日
ソニー・イメージワークス訪問。途中チャーリー・チャップリンやハロルド・ロイドなど多くのサイレント映画が撮影された「メイン・ストリート」に立ち寄る。この短い小さな通りで多くのサイレント映画が作られたそうだ。ロスの映画の歴史の深さを感じさせられる。

ソニー・イメージワークスの昼食会では、オスカー像とノミネート作品名が描かれた特製のケーキが用意されていた。ケーキを囲んで記念撮影。
背景の絵は『風と共に去りぬ』。
やはり上映、質疑応答のあと、スタジオ見学。ここは映画の特殊効果がメインの仕事のようで、余り興味はわかなかった。ハードディスクがズラーッと並ぶ細長いマシーンルーム。『メン・イン・ブラック』を思い出す。

午後、アクメ・フィルムワークス訪問。
私は昨年10月からここの所属ディレクターとして登録、アメリカのコマーシャルの仕事がここから入る予定。まだこれからですが。

アクメの社用車のジャガー。元の持ち主は俳優のジャック・レモンだそうです。

アクメには私の大好きなアニメーション作家が沢山所属している。ポール・ドリエッセン、アマンダ・フォーブス&ウェンディー・ティルビー、マイケル・デュドック・デ・ヴィット、フランク・モリス、ギル・アルカベッツ、ビル・プリンプトン、プリート・パルン、クルストファー・ヒントン、ピョートル・デュマラなどなど。「Acme」の看板は、その中のひとり、イタリアのジャンルイジ・トッカフォンドの手書きのタイルで出来ていた。



夜はアクメ・フィルムワークスとアニメーション・ワールド・ネットワーク主催のカジュアル・カクテル・パーティーに出席。パーティーには地元のアニメーション関係者、ノミネート作家が参加。
ソニー・イメージワークスから貰い受けたオスカー・ケーキを切り分ける。甘かった。
21日
午前中、アカデミーのチケットを受け取りに、アカデミーの事務局に行く。事務局の中にはオスカー像の展示があり、『白雪姫』の時、七人の小人に因んで小さなオスカー像が階段状に七つ並んだ特別バージョンなど沢山のオスカーが飾られていた。
午後ウォルト・ディズニー・フューチャー・アニメーション訪問。
これは受け付けの奥の時計。受付近辺だけは写真を撮っても良いのだが、この先の制作現場は一切撮影禁止。

ロビーで、ここで見聞きした事は一切外部に話さないとの覚書にサインしたので、残念ながら、詳細はレポードできません。
私と妻とロンさんだけで、まだ外部の人は誰も目にして無い物を見る事が出来たのですが…
ディズニーランドの様な広いスタジオで、美しく刈られた植え木はミッキーの形。敷地内は禁煙。野生のリスまでがディズニーの計算かと思えてしまいました。
昼食は長篇部門の社長はじめ、幹部、トップアニメーターと歓談。
昼食後スタジオ内にあるディズニー・ストアに案内される。30%オフだって。意外にもノミネート者全員買い物を楽しんでました。
その後スタジオツアーの続き。ツアーのためだけの専用スタッフがいて、彼はこの道6年目だそう。
資料室で『白雪姫』の絵コンテの原画、『ファンタジア』のイメ−ジ用人形など貴重な品々をみる。
オスカー像があったのでノミネート者が、代わる代わる手にとって写真撮影。けっこう重かった。
余りに広いスタジオ。昼食もふくめ5時間以上かかった。
ツアーガイドによるとこれでも短かめのツアーだそう。まだ案内し足りなそうでしたがもう結構、ヘトヘト。今回のアカデミー短編アニメーション部門のプレゼンターはミッキーマウスだそうで、お土産に「Koji Yamamura」と書かれた紙を封筒から出しているCGのミッキーの写真をもらう。ノミネート者それぞれ自分の名前入りの特製のお土産でした。

22日
長篇アニメーションのノミネート者も含めたドリーム・ワークス主催のブランチ。『アイスエイジ』の監督で一昨年『フォー・ザ・バード』で短編アカデミー賞をとったクリス・ウェッジさんと会う。ジブリの関係者は一人も来ていなかった。どうやら全員欠席のようだ。
夕方、ホテルのロビーで地元の日本語テレビ放送局の取材を受ける。


夜、ポール・デノイアさん宅で、短編アニメーションノミネート者に特製チョコレート・オスカーを贈呈する恒例のホームパーティーに出席。ポールさんは『ラグラッツ・ムービー2』の監督で普段はコマーシャルのアニメーションを制作している。パーティーにはロスのアニメーション関係者が参加していて、『アスパラガス』を制作したスーザン・ピットさんに会った。
カートゥーンのキャラクターがオスカーになっているチョコレート像をリビングで手渡される。なんと一人ずつ受賞のコメントを練習する事に。突然のことでかなり緊張してしまった。本番より緊張したかも。

23日
アカデミー賞当日。午前中、はじめて時間に余裕ができたのでホテルの周りを散歩する。
日曜でファーマーズ・マーケットが開かれていた。グリーントマトを購入。ちょっと酸っぱかった。
玩具店で、お店のおばさんが話し掛けてきた。「今日はアカデミー賞がある」と言うので、ノミネート者だといったら目を丸くして、今夜見るわよ、と応援してくれた。子どもたちのお土産を購入。おまけを沢山くれた。
午後3時、タキシードに着替え、出発前にホテルのロビーで朝日新聞ロス支社の取材を受ける。『情熱大陸』スタッフが用意してくれたリムジンで会場に向う。ロンさんと長女サラちゃんも同乗。
警備は厳戒、空には二基のヘリコプター、パトカー、警官が大勢。リムジンは会場近くで検問を受ける。
周りには反戦デモの人たちも多く集まっている。
例年のような道路に敷く長い赤絨毯は取り止めになったが、会場の前の赤絨毯を少しだけ歩く。会が始まるまで、ホールで立食パーティー。入場を促すアナウンスが何度か入るが皆セレブが来るのを待っているようで中々会場に入らない。
発表はコマーシャルが2つあけたあとだからその時ちゃんと入るようにと指示される。アカデミーは全世界に生放送されるので、秒刻みのスケジュールで進行していく。コマーシャルタイムになると皆トイレに行くなど、ざわざわと席を立つ。


時間までにもどれないと次のコマーシャルタイムまで閉め出され、開いた席にはドレスやタキシードを着たテレビスタッフ達が待機していて、ささっと座る。…3、2、1で、何事も無かったかの様にまた生放送が始まるのだ。

残念ながら賞は取れなかったが、いまさらながら自分がこの会場にいる事が不思議な気がした。
よく選んでくれました。ありがとう。

24日


翌日。ロスの近代美術館でホックニー、ゴーキー、デュビュッフェなどを見た後、サンフランシスコへむかう。
サン・ノゼ空港着。今回サンフランシスコへ招待してくれたデ・アンザ大学の教授マーティー・マクナマナさんと夕食。マーティーさんは毎年ノミネートの監督の中から気に入った監督ひとりを招待し、デ・アンザ大学で記念講演を開いているそうだ。
デ・アンザ大学はアップル・コンピュータの創設者の一人スティーブ・ジョブスがいた学校で、研究時代に制作した初期のコンピュータが展示してあった。キーボードのカバーは木製。宿泊したホテル、カプチィーノ・インの向いにアップルの本社がある。
25日
ジョージ・ルーカス似のマーティーさんの車で「ツイン・ピークス」という小高い山にのぼり、サンフランシスコを一望。
デビット・リンチ・ファンとして何か嬉しい。
坂の多い古い街、サンフランシスコ市内を観光。
マーティーさんが中華街、フィッシャーマンズ・ワープなど名所に連れて行ってくれる。
午後、サンフランシスコ近代美術館で、クレー、デュシャン、イブ・クライン、デ・クーニングの作品などを見る。
やはり本物は心に迫るものがある。


夕方、カプチィーノに戻り、夜七時三十分から、デ・アンザ大学で講演。日本からの留学生もちらほら。近郊の大学や『アンツ』『シュレック』を手掛けたPDIからもスタッフが聴講に来て、五十人ほど集まった。質問も多く、良い会になった。
26日
午前中マーティーさんが近郊のレッドウッドの森に連れて行ってくれた。とてもリフレッシュ。
大きなレッドウッドは表皮がやわらかいが中が堅く真直ぐ真直ぐ高く伸びるので家具や建築によく使われるそうだ。
その後、ILMスタジオ訪問。ILMは所在地を明かしておらず、看板もない。外見は以前あった別の会社やレストランのままで、外からはスタジオだとは気付かない。
R2-D2が片隅にい佇む大きなスクリーンの試写室で、昨日の大学と同様に上映と講演、質疑応答。
『スター・ウォーズ』をエピソード4からリアル・タイムで見てきたので、R2-D2やダースベーダーに会えてとても嬉しかった。
『ジュラシック・パーク』のCGのモデリング用につくられたT-REX。とてもリアルによくできている。ILMの社長、副社長とデリバリーのお寿司で昼食。お寿司がけっこう美味しかった。『スターウォーズ・エピソード1、2』『メン・イン・ブラック1』のアニメーション監督、ロブ・コールマンさんも同席。彼は私と同い年だ。
広報の山本さんがスタジオを案内してくれた。山本さんをはじめ日本人も数人働いているそうだ。あとでロブ・コールマンさんの部屋にもお邪魔してヨーダの戦闘シーンのCGの制作過程を見せてくれた。
通訳をしてくれた広報の山本さんによると、彼が昼食まで同席するのは珍しく『頭山』をとても気に入ってくれたらしい。

夜、オークランド空港からロサンゼルスに戻り、ロンさんと再開、メキシコ料理を御馳走になる。
写真は近くのレンタル専門のアンティーク・ショップ。フリッツ・ラング『メトロポリス』のマリアがあった。もちろんオリジナルではないと思うけど。

27日帰国。ロス空港のセキュリティーチェックがとても厳しく、ボブ・サップ似のお兄さんがぎゅうぎゅう荷物をつめ直したせいでポール・デノイアさん宅でいただいたチョコレート・オスカー像がバラバラになっていた。
長いようであっと言う間の10日間が終わった。
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